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「透琉くん、ホストしてたって噂、ほんと?」

 五月五日、こどもの日。
 お笑いライブが跳ねたあと、ホテルで落ち合った透琉くんに突撃してみた。

 もうすでにヤル気満々でシャワーを浴び終わっている透琉くん、バスローブ姿がよく似合う。
 通常ゆるふわっとしている髪の毛が、濡れて後ろに撫でつけられているから、大人っぽく見える。
 ホストだと言われても違和感ない。


 大きな茶色い瞳を丸くして、透琉くんが答えた。

「あー、うん。やってたけど、二年くらい前だし、すぐ辞めたし。そんなでも、噂って広まるもんなんだねー。すげえ」

 人ごとみたいに笑ったかと思うと、すっと真面目な顔になった透琉くんは、じっと私を見て不安げに尋ねた。

「聞いて、嫌いんなった?」

「……なってない」

 むしろ、好きだから嫌なんだ。
 女の人とイチャイチャするのが仕事だったなんて。


「菜々ちゃんと出会う前の話だからね? 若気の至りっていうか、単にお金がなくて、背に腹は変えられなかったっていうかさあ。家賃滞納しすぎて、アパート追い出される寸前だったし。群司のやつ、ああ見えてバカじゃん? 有り金全部賭けて一点買いした馬券、外してやんの。オッズ、1.2の大本命。あれはマジで笑った」

 そして途方に暮れた二人は、バイト代即日払いに惹かれて、ホストクラブに入店したらしいけれど

「群司、無愛想すぎてクビ。あの顔でクビって、どんだけ向いてないんですかって思ったよね。結局俺がアイツの分まで稼いでさあ……あっ、出世払いっつって、まだ払ってもらってなかった!」