一旦喋り出したら、ぺらぺらと。マシンガンのように止まらない、雪美さん節。

「大事なんは、シチュエーションよりもタイミングや思わへん? いくら凝った演出でも、タイミング合わへんかったらどないすんねんなあ。とーる、売れっ子やから、オフの日は月に一日あるかあらへんかやん。そんなやのに、睡眠削ってダンスレッスン通い詰めて、演出がどうのこうのとかアホやで、ほんま」

「ダンスレッスン?」

 何だそれは。
 目を丸くすると、雪美さんは罰が悪そうに言った。

「あー、喋りすぎた。勝手にネタバレして、とーるに怒られるなあ。まあとにかく、とーるはサプライズプロポーズ第三弾を企画しとるみたいから、それを待つんやったら、今日はもう会わへんと帰り。けど、とーぐんの忙しさや、取り巻く状況の変化を考慮したら、待たんと今すぐ会い。どうするかは、菜々ちゃんが決めや」

 突きつけられた、二択。

 どうやら透琉くんは、仕切り直してプロポーズしてくれる予定があるらしい。
 それもかなり凝った演出の。睡眠を削ってダンスレッスンに通うほどの。

 それを待ちに待って、見たいという気持ちはあるけれど。
 雪美さんの言うとおり、予定が予定通りに実現する保証はない。

 透琉くんの仕事は不規則で、変則的で、怒涛のように忙しいから。
 今、ここで会えるチャンスをみすみす葬ってしまって、後悔しないだろうか。

 ていうか、答えはそう難しいことじゃない。

 私の欲求は、シンプルでベスト。

「会いたいです。透琉くんの、顔が見たいです。寝ててもいいんです」