妊娠五ヶ月目だというお腹は、そう言われれば少しふっくらしてるのかな? という程度で、まだそれほど目立たってはいないけれど。
 ゆったりしたシルエットのチュニックを着て、前より顔つきが柔らかくなったように思う雪美さんは、ああ妊婦さんだなあと思う。以前はタイトなシルエットの洋服を着こなして、キリっとした顔つきをしていたから。

 今の雪美さんからは、内面から滲み出るような母性を感じる。


「とーる、ゲストルームで寝かせとるから。介抱してやってほしいねんけど……」

 飲み散らかったリビングダイニングをテキパキと片付けながら、雪美さんは言葉を濁した。

「だいぶ酔ってたからなあ。菜々ちゃん呼んだん、記憶にないかもしれへんで。とーる的には、まだ会う予定にしてへんみたいやいうか……。そやなあ……でもまあ、ええんちゃう?」

 何に対しての「ええんちゃう?」
 頭にでっかい疑問符が浮かぶ。

「え、あの……透琉くんは、私に会いたくないって言ってました?」

 会いたい、迎えに来てと言ったのは、酔っ払いの戯言?
 かなりアルコールが回っているようだとは思ったけれど。

「ちゃうちゃう。『まだ』会う予定にしてへんってことな。菜々ちゃんへのプロポーズ、こけたやろ。せやから、次こそは思うて、めっちゃプラン立ててん。そういうところ、とーるはほんま可愛いし、アホやなあ思うわ。男ってそういうとこ、無駄にロマンティストやねんな。そんなこだわりええから、はよせえっちゅう話やねんけど。今日も、そう言うたったとこやねん」