「……困んないでよ。一生居座ろうと思ってんのに。あ、ヤバイ」

「え?」

「スマホのバッテリー、ヤバイ。続きはウェブで、じゃなくて久遠家で、ね」

一方的に通話が切れた。
じっとこっちに視線を注いでいる、遠藤くんとバチリと目が合う。


「ごめん、遠藤くん。私、行かなきゃ……ごめん! この借りは、いつか必ずお返ししますので!」

あたふたと財布を取り出す私に、遠藤くんが笑った。

「いつかじゃなくて、今。ここ奢ってくれたら、チャラにしますよ」

なんて歯切れのいい提案だろう。
さすが遠藤くん、イイオトコ。

「了解。じゃあ、これにて。ごめんね、また明日!」

二人分のファミレス飲食代を置いて、飛ぶようにして電車に乗った。

たぎる衝動に胸がはやる。

“菜々香”

透琉くんの肉声が、息遣いが、魂をがつりと鷲づかみして、ぎゅうっと苦しい。

“会いたい。迎えに来て”

それはこっちの台詞だよって、酔っ払いに言ってやる。