「うう~、イイオトコ不信になりそう……」
会社帰りの、ファミレスにて。
胸のうちをポロリと漏らすと、向かいに座って、熱心に書き物をしている遠藤くんが、手を止めずに拾ってくれた。
「何ですか、ソレ。男性不信じゃなくて?」
「うん、遠藤君は信じれる気がする」
「何ですか、ソレ。遠回しに、お前はイイオトコじゃないって言われてます?」
「……あ、遠藤くんもいい男だよね。うっかりしてた」
「どんなうっかりですか。……辻さんと何かありました?」
顔も上げずに遠藤くんが言った。
書いている文章は、来月に結婚する先輩のための「祝辞」だ。
「結婚」の二文字を見ると憂鬱になってしまう今の私は、遠藤くんに丸投げ状態。
非常に駄目な先輩です。
「部下にしたくない」と言い放った部長の前では、しゃかりきに働いてみせるのに、遠藤くんの前ではついだらけてしまう。
「ないよ、何にもない。なさすぎ。いつの間にか、無かったことになってるっぽいんだもん。あのプロポーズ。返事してないのに」
不満いっぱいにぼやくと、遠藤くんはさらっと言った。
「じゃあ、したらいいじゃないですか。返事」
「えっ?」
「返事、保留にしたままなんでしょう? それは小西さんが悪いですよ。一本電話すれば済む話じゃないですか。ぼやいてる暇があったら電話しましょうよ。ほら早く、電話して」

