「はい?」

「好きな女性のタイプ。……ちょっと抜けてるドジな娘かな。部下にはしたくないタイプ」

 ナルホド。
 課長のように仕事人間だと、逆にそうなるのか。

「それと直感。キスしたときにビビッとくるかどうか。……試してみるか?」

「え?」

 真顔で迫り来る課長を思わず凝視した。
 さすがアメリカ大学卒。さらっとユーモアを披露だなんて、これが噂に聞く

「アメリカンジョークですか?」

「…………」

 うそっ、ここにきてまさかの黙秘権行使。

 無言で真剣な顔つきのまま、ゆっくりと前屈みになってきた課長は、右手をトンっと私の顔の横についた。
 背後は柱だ。

「壁ドンっ」ならぬ「柱トンっ」だ。
 大人ならではの、ソフトタッチな追い詰め方。

 なんて悠長に考察してる場合じゃないですよ!

「この後の予定は?」

 顔を傾けた課長が、ぐっと甘い響きで尋ねた。

「こっ、この後は……」

「ん?」

「観たいテレビがあるんです!! お先に失礼します!!」

 するっと「柱トンっ」をすり抜けて、だだっと駆け出した。