だけど何かと接点は多い。

 親会社よりずっと社員数が少ない子会社ゆえ、課の長から直接指示される仕事も多いし、販売課の女性社員は私一人ゆえに。
 そんな折、総務の先輩から意外な話を聞いて、びっくりした。

「いいよね~小西さん、英課長と一緒に仕事できて」

「えっ、何でですか!?」

「えっ。だって、かっこいいじゃん。英課長。アメリカの大学卒で、農機でも超ヤリ手で通ってて、会長の甥だか何だかでしょ。超有望株じゃん。三十二で課長だし。婚約者とかいるのかなあ? 小西さん、知らない?」

「知らないです。今聞いたことも、初耳ですもん。凄いですね、森さん。情報通」

 感嘆すると、森さんは

「そりゃもう。『情報を制する者は、いい男を制する』ってね。英課長のプライベート情報、入手したら流してね。何卒よろしくお願いします。ハイ、これ賄賂」

 事務服のポケットから取り出した、のど飴をくれようとする。

「えええっ、そんなっ……困ります!」

 あの課長から、そうそうプライベートな情報なんて引き出せる気がしない。
 世間話でさえ、ままならないのに。

「んじゃ、これも付ける」

 そう言って森さんは、化粧直しに使っている最中の化粧ポーチから、新品らしきストラップを取り出して見せた。

「いえ、そういう問題じゃ……」

 断りかけて、はっと目を見張る。
 それはまさか――

「非売品だよ。しかもとーぐん、プレミアものだよ。小西さん、笑イト好きだよね?」