彼はお笑い芸人さん

「生放送で、とーぐんが出るんですか?」

「うん」

 ……って言って良かったのかな?

「笑イト」はドッキリを筆頭に、サプライズ企画が多くて、放送当日まで公開内容は極秘という日も多い。
そういえばぐんちゃんに聞くまで、「とーぐんがライブ漫才をする」という情報は、全く耳に入ってこなかった。
とーぐんのことなら、何でも網羅していると思っていたのに。

「ほんっと好きですよね。……じゃあお店の下見は、急ですけどこの金曜はどうですか? 大義名分使って、仕事早めに切り上げるんで」

 遠藤くんの言うところの「大義名分」は、職場の先輩のために「下見」に行くのであって、遊びじゃないという意味だろう。
 私と遠藤君が所属する「販売課」の先輩が、十二月に結婚式を挙げる。
 披露宴後の二次会の幹事を任されたのが、直属の後輩である私たち二人だ。

 おめでたいことだから、最高のプランを立てようということで、私と遠藤くんの気持ちは合致している。
 気乗りしているときの遠藤くんは、見惚れるほどのリーダーシップを発揮してくれて、頼もしい。

 仕事では相変わらず、適度に手抜きだけど。

「じゃあ、金曜日で。金曜なら、遅くなっても大丈夫だから」

 そう告げると、遠藤君は何故かむっとしたような顔をした。

「全く、もう。そんなこと軽々しく言っちゃ駄目ですよ。僕、勘違いしますけど?」

「え? 勘違いも何も……。金曜なら予定ないし、次の日休みだから、遅くなっても大丈夫って意味なんだけど」

「まんまの解説、ありがとうございます。分かりました、小西さんが僕のこと全く、異性として意識してないの。まあ、今さらですけど」