そう言うと、ハラハラと男泣きし始めた永原さんにぎょっとした。
「永原さん……」
私のせいだ。
謝ろうとして、はっとした。
ごめんで済むほど甘くないと言われたばかりだ。
躊躇して口をつぐむと、透琉くんが一歩進み出た。
「……うん、分かってる。いや、分かってなかったかもしんないから、この場で誓う。永原を泣かせた責任は、ちゃんと取るよ。見てて。俺のこと見捨てないで、期待してて。絶対、応えるから」
「そんなこと言って……どうせあなたは、口だけですよ。軽いんですって、言葉が。信用できません……また信じて、裏切られるのは、嫌です」
言葉を詰まらせながら、永原さんが突っぱねる。
「そんなこと言わないでよ。永原が信じてくれないと、俺、何もできる気しない」
透琉くんも泣きそうな顔して言った。
その頼りない響きに、永原さんは濡れた瞳を上げた。
「あなたって人は……本当に天性の人タラシですね。呆れます。その才能、芸に生かしてくださいよ」
「永原が期待してくれるなら」
*****
家に帰ると、雪美さんから電話があった。
私と透琉くんのことを心配してくれていた。
そもそも透琉くんがあのマンションに駆けつけて来たのは、雪美さんからの情報らしい。そういえば透琉くんは「某芸能関係者からのタレコミ」と言っていたっけ。
テレビ局近くの喫茶店で久遠さんを待っていたとき、近くのテーブルの会話が小耳に入ったらしい。
「とーぐん」というワードに反応して、つい聞き耳を立てているうちに、どうも怪しい話だと勘付いたようだ。

