案内された先は、マンションの一室だった。
 岩崎悠大がドアのインターホンを鳴らすと、少し待たされてからロックが解かれた。

 岩崎悠大の話によると、ここは高山さんの自宅ではなく、ホテル代わりに使っている別宅らしい。
 そう聞いても何ら違和感がない。さすが大物芸能人という感じだ。


「じゃあ行こうか。大体の話は僕がつけてあるから、後は君が頑張ってよ」

「はい、頑張ります」

 正直めちゃくちゃガクブルするけれど、とーるくんの、とーぐんのためなら、土下座でも何でもしよう。

 ありがたいことに復帰してからのとーるくんは、仕事を干されることもなく逆に引っ張りダコだけれど、話題性を狙ってのオファーが多いようだ。
 ゴシップが売りになってもそれは一時のことで、今後のことを考えると、やっぱり高山さんを敵に回したままではマズイと思う。

 岩崎悠大の後に続いて入った玄関先には、やけに沢山の靴が並んでいた。
 男性物の革靴はともかく、女性物のヒールに目が点になる。

――え、女の人が来て……る?


「悠くん、遅い~」

 扉の向こうから現れたのは、確かに女性だった。二十歳くらいの若い娘だ。

 両サイドの髪を可愛らしく編みこみしていて、下ろした毛先はくるりんと巻いている。
 睫毛もくるりんと巻いていて、重量感がある。まつエクかな。

 花柄のワンピースはヌーディーなデザインで、零れ落ちそうな胸の谷間につい釘付けになってしまった。
 呼びかけられた当の「悠くん」はそこには目もくれず、

「ごめん、後でね。先にこの娘、紹介するから」

 と言って、彼女をどかせた。