「恥ずかしくないよ、今でも十分。自慢の彼氏だよ、透琉くんは」

 力いっぱい断言すると、透琉くんは呆気に取られたような顔をした。

「ホントに?」

「ほんとに」

「でも菜々ちゃん……付き合って一年以上経つけど、一度も家族や友達に俺のこと紹介してくれたり、したことなくない? 外で会うときも、いっつも人目気にしてるし……」

 急にモジモジと視線を俯ける透琉くん。
 まさか、そんな風に気にしてるとは思いもよらなかった。

 確かに、私との交際をオープンにしていて、友達や仕事仲間や先輩にも堂々と紹介してくれる透琉くんと違って、私は透琉くんと付き合っていることを誰にも言ったことがない。
 遠藤君には、言ったというかバレてしまったけれど。


「だ、だって、それは……やっぱり、」

 透琉くんが普通の職業じゃないから、言いにくいというのは確かにある。
 不安定な、人気商売だから。

 だけど、たとえ誰に何と言われても、透琉くんが好きだという自信はある。
 ないのは、自分自身への自信だ。

「私が透琉くんの彼女だなんて、なんか申し訳ない気がするんだもん。ひけらかすとバチが当たりそうな気がして」

 本当に常々思ってることだけど、口にして後悔した。

 何だ、このネガティブ思考。

 引いちゃいないだろうかと透琉くんを見上げると、ぎゅむっと片手で抱き寄せられた。

「何それ、殺し文句? 俺もそれ言いたい。けど、俺は見せびらかしたい。だって菜々ちゃん、こんないい女なんだもん。罰ならいくらでも受けるよ。俺、ドMだし」