【完】私と先生~私の初恋~

瞬間、離れるのが正しかった事なのだと、私は自分に言い聞かせた。


こんな自分の泥沼のような人生に、もう先生を巻き込んじゃいけない。


そう思いながらも心のどこかでは、先生に会いたくて、このまま離れたくなくて、ダダを捏ねてる自分が居る。


ダメ…でも…いや絶対にダメだ……私は久々に味わう心の痛みに、葛藤していた。


長い長い葛藤のあと、私は思いついた。


最後に一度だけ、先生に電話をしよう……それで心の踏ん切りをつけよう…と。


よくわからない緊張が、私を支配する。


コレが最後。と何度も自分に言い聞かせながら、私は思い切って携帯のボタンを押した。


「…………」


暫らく鳴らしても、先生は電話に出ない。


やっぱりそうだよな…出るわけ無いよな。でもかえってこれで踏ん切りがついた…。


そう思いながら電話を切ろうとしたその時、呼び出し音がブツっと急に止まる。


「……もしもし…」


先生の声がした。


「……もしもし…早苗さん?」


久しぶりの柔らかい声に、胸が一杯になる。


「…お久しぶりです…先生。」


何とも言えない懐かしさで、私の心は一瞬で穏やかになっていった。


「お久しぶりです。元気にしてましたか?」


「はい。…先生こそ、元気でしたか?」


昔のように笑いあう。


「元気でしたよ。…早苗さんは今日卒業式でしたよね?おめでとうございます。」


「…ありがとうございます。」


卒業という言葉に少しだけ現実を思い出して、胸が痛む。


「どうしたんですか?急に。」


先生はいつもと変わらぬ明るい声で、私にそう尋ねた。


先生の言葉に大きく一回深呼吸をして、私は勇気を出して話し始めた。


「…これが最後のつもりで、先生に電話をかけました。」


「……最後?」


「はい。…先生に電話を掛けるのも…今日で最後にします。」


電話の先で先生が黙り込む。