自覚をするとこの状況がとっても恥ずかしく感じる。


けれどそれ以上に先生が横に居るのがとても嬉しい。


このままこんな時間がずっと続くといいな…そんな事を考えていると、授業終了のチャイムが鳴った。


「さて、そろそろ戻らないと」


先生はそう言うと立ち上がり、小さく背伸びをした。


その瞬間、先ほどまでの心地よさはサっと消えうせて、私は一気に現実に引き戻された。


ここでさようならをしたら、次はいつ先生に会えるのかな…?そう考えるとまた胸が締め付けられる。


「じゃあ、また…」

ニコっと笑って先生は小さく手を振った。

校舎に戻って行く先生を見ていたら物凄いもどかしさに襲われて、私は気がついたら先生を呼び止めていた。


「え?」っとした顔で振り返る先生に、急いで駆け寄る。


「あの……」


「どうしました?」


ドキドキしながら話しかけ、頭の中で一生懸命先生との接点を探す。


先生との時間を作るには、今の私にはコレしかない。


「……歌を私に教えてください。」


先生は驚いた顔をした。


「歌?中学校に音楽部ってありませんでしたっけ?」


「あります。けど…」


「だったら僕に教わるより、中学校で教わった方がいいん…」


言いかける先生の言葉を遮る様に、私は話を続けた。


「…私、自分の歌を初めて褒めてくれた先生に教わりたいんです。


もっともっと上手になって、自分に自信を持ちたい。」