翌朝。


私は携帯で6時になったのを確認すると、やっとの事で体を起こし、自分の荷物をまとめ始めた。


結局、一睡も出来ていなかった。


少ない荷物をまとめ終え、服を着替える。


大きく一回深呼吸をしてから、私は扉をそーっと開けた。


ソファから少しだけはみ出している先生の頭が見えた。


物音を立てないように慎重に部屋から出ると、先生の方をチラッと見る。


うずくまる様に毛布を体に巻きつけて横になっている先生は、どうやら眠っているみたいだった。


何故だか少しホッとしつつ、静かに玄関に向かう。


靴を履いた私は小さな声で「お邪魔しました」と言うと、玄関の外にでた。


早朝の生温い風が、気持ち悪かった。


久々の実家。


玄関の扉を開けると、ツンとお酒の臭いが鼻に付いた。


何だか嫌な予感がしながら、リビングに入る。


出て行った時のまま荒れ果てているその部屋で、母が横になってテレビを眺めていた。


酒瓶やビールの缶が、母の周りを取り囲んでいた。


「…お母さん。」


私が声をかけると、母はだるそうにこちらを見た。


そして声をかけたのが私だという事に気がつくと、ラリった様にニヤ~っと笑ってフラフラしながら立ち上がる。


「早苗ぇ~~♪」


母は倒れこむように私に抱きついた。


「早苗ぇ~おかえりぃ~♪」


息がむせ返るように酒臭い。


「…なにしてるの?」


「早苗が帰ってこないからぁ~テレビ見てたのお~」


母はテレビの方を指差し、突然ギャハハと笑い始めた。


何がおかしいのか、まったくわからない。