【完】私と先生~私の初恋~

「先生こそ…そんな大変そうな話なのに、ニコニコしすぎです。」


「仕方ないです。この顔は産まれ付きなんですから。」


先生はわざとらしくニッコリして見せる。


その顔を見て、私も思わず笑ってしまった。


もう冷めてしまったコーヒーを一口飲むと、私はふと気になって先生に質問をした。


「……先生は、女性とお付き合いした事はあるんですか?」


「え!?」


突然の素っ頓狂な質問に、先生が大きく驚く。


「いや、その……先生は優しいし…背が高いし…ピアノ弾けるし…モテたのかなぁ?って…」


言葉尻がだんだんと萎んで行く。


そんな私を見て、先生は少し困ったような顔をしながら答えた。


「………そう、見えますか?」


私はゆっくり頷いた。


「モテた…という記憶はありませんが……そういう風になった女性なら、何人かは居ましたよ。」


胸がぎゅっと痛くなった。


でも「そういう風になった」という言葉が何かを濁しているような気がして、私は更に質問した。


「そういう風になったって言うのは…お付き合い自体はしていないという事ですか?」


「…そういう事になりますね。」


先生は苦笑いをした。


「…さぁ恋人になりましょう、という事は無かったです。物凄く曖昧な関係しか、経験した事がありません。」


「そうなんですか…」


何となくで聞いた事を、ちょっと後悔し始める。


先生は下を向いて少しだけ考え込むと、ハハっと小さく笑って話を続けた。