「ね??ほーら簡単。」


先生はニッコリと笑った。


「凄い、どうやったんですか?」


嬉々とした声で、先生に尋ねる。


「アハハ、内緒です。ただ、凄い事をしてるように見えても、ある程度弾ける人には簡単に出来るんですよ。」


私が「そうなんですか?」と聞くと、先生はニコニコしながら頷いた。


「だから将来同じ事をされて、悪い人に引っかからないように!」


先生は笑いながら言ったが、私はその言葉に少しだけ胸が痛んだ。


「さてと、コーヒーでも入れましょうかね。飲みますか?」


私が頷くと、先生はキッチンに移動する。


私はそれを見て、ソファに戻った。


少しの間、なんともいえない心地良い空気が流れる。


先生が持ってきたコーヒーカップに口をつけると、私は質問をした。


「先生は何歳からピアノを始めたんですか?」

「うーん…3歳位かなぁ?気がついたらもう始めていたので、結構あいまいです。」


先生はカップを置くと、小さく笑った。


「母が厳しい人で、毎日何時間も弾かされていたんですよ。あの頃は凄く嫌だったけど、今となってはやっといて良かった!って思ってます。」


「先生のお母さんは、厳しい人だったんですか…」


私がそう言うと、先生はフッと悲しそうに、それでもニコニコしながら視線を落とした。


「……前に、少しだけ言った事がありましたよね。僕にも色々あったって。」



私は小さく頷いた。


先生は自分の半生を、ポツリポツリと語り始めた。