電話の先で、先生が暫く黙り込んだ。


繋がっているのか不安になって、私は「先生?」と話しかけた。


「…………今、どこにいるんですか?」

先生は静かな声で聞いた。


バス停の表札を見る。


「…〇〇前のバス停のベンチに座っています。」


「すぐに行きます。そこで待ってて。」


先生は電話を切った。


さっきの先生の少しひんやりした声を思い出し、私はやっぱり迷惑だったんだな…とメールをした事を後悔した。


電話をしてから10分位で、先生の車はバス停にやってきた。


私のまん前に停まると、先生は中から助手席をガチャっと開けて「乗って。」とだけ言った。


何だか少し怖くて、私は慌てて車に乗った。


ベルトを締めて、下を向く。


先生はそれを確認すると、車を発進させた。


嫌な沈黙が続いた。


結局一言も喋ることなく駐車場に着くと、先生は車を降りた。


それを見て、私も慌てて車を降りる。


先生は少し早足に玄関に向かい扉を開けると、「入って。」とだけ言った。


私はやっぱり何だか怖くて、急いで中に入った。


玄関で二人、突っ立っている。


重苦しい沈黙が続く。


そーっと先生を見ると、無表情でどこか一点をじーっと見つめていた。


私は堪らなくなって、先生に謝った。


「ごめんなさい、迷惑だってわかっていたのにメールなんかし…」


言い終わらないうちに、私の体はグイっと引っ張られた。


ビックリして息が詰まる。


一瞬頭が真っ白になった後、私は先生に抱きしめられていることに気がついた。


突然の事に暫く固まっていると、先生はそーっと少しだけ体を離した。


キョトンとしている私の顔をジッと見つめる。


そして私の左のコメカミ辺りを見ると少し苦しそうな顔になって、また私をぎゅうっと抱きしめた。