【完】私と先生~私の初恋~

「あと一年……自分の身は自分でしっかり守れると、そう約束できますか?」


先生は私を真っ直ぐ見つめると、搾り出すようにそう言った。


私は少しだけ考えた後、大きく頷いた。


「……わかりました。でもこの次に何かあった場合、僕は躊躇なく通報します。それでもいいですね?」


「はい。…構いません。」


先生はまたフーッと大きく溜め息をつく。


「…僕が女性だったら良かったんですけどね……」


私はまた、下を向いた。


「……僕、ずっと心配だったんです。」


「え?」


予期せぬ言葉に、驚いて先生を見る。


「…僕が赴任してきた頃……早苗さん、虐められてたでしょう?」


先生は私を見ずに話を続けた。


「虐められてるのが解って…何とかしてあげたいのに、僕には何も出来なくて……
せめてもの償いのつもりで、歌のレッスン引き受けたんです。」


「………」


「…少しでも支えになれば…そう思って始めたんです。そしたら早苗さんはどんどん明るくなっていって、友達も出来て…あぁコレで良かったんだって。


京都行きの話が来た時…正直少し迷ったんですけど、今の早苗さんなら大丈夫だろうと思って決心したんです。」


私は黙って頷いた。


「そしたら泣いてる早苗さん、見ちゃったじゃないですか。…良かれと思ってやった事で、僕はこの子を余計に傷つけてしまったんじゃないかと後悔して…。


手紙も出そうかどうか、本当は迷ったんです。でも、早苗さんの先生に会えて良かったって言葉がどうしても頭から離れなくて…」


先生は恥ずかしそうに頭をかいた。


「教師としての自信を無くしかけていた時に言われた言葉だったし…自分が誰かに必要とされた事ってあまり無かったから、余計に嬉しかったんです。」