【完】私と先生~私の初恋~

先生はよろよろ歩く私に駆け寄ると、さっと肩を支えた。


そして次の瞬間、フワッとした感覚があったと思うと、私は先生に俗にいうお姫様抱っこをされていた。


先生は、完全に脱力した状態の私を器用に車の後部座席に乗せると、


「狭いけど、ちょっとだけ我慢してね」


と、車を走らせた。


泣き疲れたからか、それとも先生に会えた安心感からか、私は横になりながらウトウトしていた。


*
「早苗さん、起きてる?」


声をかけられて、小さくはいと返事をする。


気がついたら車は停まっていた。


「ちょっと待っててね。」


そう言って先生は車から降りた。


ここはどこなんだろう…横になったままボーっと考えていると、先生が後部座席のドアを開けた。


「起き上がれる?」


小さく頷いて起き上がった私の体を少しだけ引っ張ると、先生はヨイショっと言い、また私を抱っこした。


乱暴に体でドアを閉める音がする。



見慣れない場所に目を凝らすと、目の前に小さなマンションが見えた。


どうやらココは、このマンションの駐車場だったらしい。


先生は一階の一室の扉を空け、私を玄関に座らせると、玄関の鍵をそーっと閉めた。


「…鍵…」


先生がボソッと呟いたのが聞こえて、私は首をかしげた。


「…家の鍵閉めないで、出てっちゃってたみたい…」


先生が恥ずかしそうに頭をポリポリかいたのを見て、私はようやく少しだけ笑った。