「わかった、落ち着いて……今家にいるの?」


「…家にいない…そとにいる」


「外ってどこ?一人で居るの?」


「〇〇病院の…所で……うん、ひとり」


「〇〇病院にいるのね?」


「…うん…」


「わかった、今から行くから絶対にそこで待ってて。


いい?わかった?絶対に動かないでそこで待ってて!」


先生はそういうと電話を切った。


切れた電話を握りながら、深呼吸を繰り返す。


呼吸こそ乱れていたものの、涙は止まり、私はその場に座り込んだままぼーっとしていた。



風や草の音に耳を傾け、何も考えられずに座っていると、車の音が徐々に近づいてくる。


近くで停まったな…と思っていると、また携帯が鳴った。


「もしもし?今〇〇病院に着いたんだけど、どこにいるの?」

先生の声だ。


「…病院の影にいます」


「影…?……今、僕が見える?」


身を乗り出して病院の正面入り口辺りを見ると、関岡先生がキョロキョロしながら立っていた。


「…見えます」


「よかった。じゃあこっちに出てこれるかな?」


私は携帯を耳に当てながら一生懸命立ち上がると、フラフラしながら先生の方に歩いていった。


私に気が付いた先生が、凄く驚いているのがわかった。


家から一目散に逃げた私の恰好は、引っ張られてヨレヨレになり所々破れたTシャツに、砂だらけになった短パン。


その上裸足で頭はボサボサ。


薄明かりの下の私は、幽霊の様だったことだろう。