そんな生活をひと月ほど送ったある日、それでも体力には限界がやってくる。


その日のバイトを終えた午後8時頃。


いつものようにネグラを探していると、クラクラと立ちくらみがする。


気合を入れて歩こうとはするのだが、体にまったく力が入らない。


私は限界を感じ、半ば無意識に家に帰ると、即自室のベッドに潜り込んだ。


寝付いてどれくらいたったかわからない。


ただ、多分そんなに時間がたたないうちに、あの男は部屋にやってきた。


体を這い回る手の動きで目が覚める。


私はまた、猛烈な嫌悪感に襲われた。


そうか、今日もやっぱり母は居なかったんだな…


半ば考えるのを拒否し始めた頭で、ボーっとそんな事を考える。


母はお腹が大きいのにもかかわらず、相変わらず週に何日かはスナックにバイトに行っていた。


このまま私が我慢をすれば、とりあえず休めるのかな……


覚悟を決めかけたその時、男の手は私の服の中に滑り込んできた。


その瞬間、一瞬だけ先生の顔が頭をよぎる。


「いやあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


実際にはこんな女らしい叫び声じゃなく、もっと獣に近いものだったかもしれない。


私は男を蹴るように突き飛ばした。


一瞬だけ男の体が離れる。


怒りと興奮で頭はクラクラする。


息を荒げたまま起き上がろうとすると、男はニヤッと笑ってまた私に襲い掛かった


どのように体をジタバタさせたか解らない。


ただ、私の服を剥ぎ取ろうとする男の手を、必死で引き剥がそうとしていたのだけは覚えている。


ひたすら男の体を蹴り上げていた私の足が何発目かでようやくクリーンヒットし、男は小さく呻きながらかがみこんだ。


今しかない…!


私は机においてあったカバンを手にすると、一目散に家から飛び出した。


とにかく必死で走って、近所にあった当時はもう使われていない病院跡地に、身を隠した。