文化祭当日。私達の公演は14時から。


一曲限定と条件を提示してしまったが為にトリを持たされるという事を、私はその日の朝に初めて知らされた。


友人達は恋人とデート状態だったので、ただ一人何もする事が無い私は適当にその辺を見回ると、喧騒から逃げるように屋上に向かった。


やっぱり引き受けるんじゃなかった…


激しく後悔しつつ屋上のベンチに座り2時間くらいボーっとしていると、関岡先生からメールが来た。


「高校に着きました。今、どこにいますか?」


単純に歌を見に来るだけだと思っていた私はあまりに早い到着に驚いて、呆けていた頭も一瞬で吹っ飛んだ。


「何もする事が無くて、B棟の屋上に居ます。」


久しぶりに会えるドキドキと恥ずかしさで一人ソワソワしていると、返事を返してから15分くらいで、先生は屋上に現れた。


私に気がついた先生は、ニコニコしながら懐かしそうにこちらに歩いてくる。


昔と何も変わらないその姿を見て、心臓がドクンとなった。


「お久しぶりです、元気でしたか?」


「先生こそ、元気でしたか?」


自然と笑みがこぼれる。


「色々あったけど元気ですよ。…早苗さんは変わりましたね、見違えましたよ。」


「先生はあまり変わりませんね。」


見違えたという言葉に不思議な心地良さを感じながら、数年ぶりの先生の柔らかい声に身も心もトロけていた。


久しぶりに会えた嬉しさに胸が一杯になって、何を話せばいいのか解らなくなった私は、さっきまで座っていたベンチにまた腰を下ろした。


先生も同じように、私の隣にチョコンと座る。


昔とは何かが違う心地良い沈黙の後で、今度は私から話しかけた。