いつかのようにバックと書類を握りしめて、パンプスを履くと家を飛び出す。 「慌てすぎてケガしないでよ」 「うんっ! 行ってくるね」 なっちゃんの忠告を背に受けながら、あたしはアパートの階段を軽快に駆け降りた。 高さはそれほどないが、ヒールのあるパンプスでアスファルトを蹴って走る。 書類のことを思い出すと嬉しさがこみあげてきて、顔は緩みっぱなし。 すれ違う人に変な目で見られちゃったりしたけども、そんな些細なことはどうでもいいと思えた。 それほど喜びの方が大きかったんだ―――……。