そして、5分後。 「オーディション受けるなら、コーヒーはやめとけ」 その一言とともに、目の前に出されたのは……一杯のレモネード。 「え? これ……」 「唄う仕事がしたいんなら……声くらい大事にしとけよ」 そう言うと、あたしの頭をクシャッとひと撫でし、その場から立ち去る彼。 残ったのは、あったかいレモネードと彼の手の感触。 ウソ……。 このレモネードって、高瀬さんがあたしのために? ジッとカップに入ったレモネードを見つめる。 ゆっくりと口に運ぶと、甘酸っぱいレモンの味がした。