長い黒髪をゴシゴシ拭く。


風呂上がりかよ、ってくらい濡れてる。


どんだけ雨に当たってたの?


「隼世くん。……痛いかもです」

「はいはい。我慢」

「はーい……」



水気がだいぶなくなった髪の毛をくしゃくしゃ撫でてみる。


すると、不思議そうな顔で俺を見た。


「どうして……隼世くんは何も聞かないの?」

「茉璃が何も言わねぇから」

「そしたら何も聞かないの?」

「聞かれたら嫌なことなんだろ」

「やっぱり………優しすぎます」



そんなこと言われたら、せっかく忘れようとしてたのに………


また好きになるじゃん。


「バカ」って言いながら、茉璃の額をベチッと叩いた。


二人で冷たい床に座ってるけど、この距離感がもどかしい。


前までなら、ずっとくっついてたのに。


今は隙間がある。


埋められない隙間。


俺らの距離感。