まず彼女がいて女に不自由しない俺が、あの女を好きになった理由は単純。
移動教室で廊下を歩いてる時だった。
3組の俺らは1組の教室の前を通っていたら、教室の出入口に立っていた。
胸まで伸ばした黒髪に真っ白な肌。
長い睫毛に真っ赤な唇。
名前も知らないし、見たこともない。
そんな女だったけど一瞬で俺の心をさらっていった。
「あ~……やっぱかわいいわ。あの女」
「俺はあの子の友達の方が好みだけど?玲菜ちゃんだっけ」
「アイツの名前なんてーの?」
「知らないなぁ……。あ、ほら。気になるなら直接聞けばいいじゃんか」
直接聞く!?
いやいや!無理だって。
女から名前聞かれることあっても、俺から名前聞くことないし!
「今度見かけたら話し掛けてみなよ。俺も協力するからさ!」
「いや、遠慮しときます……」
恭平は応援してくれてるんだか、何なんだか……。

