【完】ズルい瞳[短編]




私を抱きしめる蒼ちゃんの腕は、まるで壊れ物を扱うかのよう優しく温かいものだった。




「こんな言い方じゃ伝わらねぇよな」




頭をポンポンと撫でながら蒼ちゃんが呟く。




「ホントは俺、お前を迎えにここまで来たんだ」




「え……?」




その言葉に顔を上げ、視界に蒼ちゃんを映そうとしたのだけど




「ばーか。恥ずかしいから今は見んな」




と、更に強く抱きしめられてしまう。




「お前は覚えてねぇかもしれないが、俺が教師を目指すキッカケを与えてくれたのは紛れもなく、お前なんだぜ?」




「…………え」




記憶の糸を手繰る。




「お前、昔から歴史の暗記モノが苦手でよく俺に泣き付いてきただろ?その時……」




「あ……」




思い出した。




あれは確か、小学5年生の時の夏休みの宿題。




歴史年表を作成しなきゃいけなかったのに、苦手な私はついつい後回しにしてしまって




そして、夏休み最後の日に高校生だった蒼ちゃんに泣き付いたんだっけ。




「あん時のお前、相当必死で可愛かったわ。完成した後も“蒼ちゃんはずっと、あおいの先生でいてね”って、あれ殺し文句だよな」




「う………」




自分のしてきた恥ずかしい過去を




それでも“可愛い”と言われ、内心複雑だ。