獣の耳が生えているからなんだ。


金色の瞳になったからってなんだ。


その全てが秋月くんを作り上げていると思ったら全てが愛おしく思えてくる。



「…俺が怖くないのか…?」


「怖い…?何でですか?」



秋月くんが恐る恐るといった感じに聞いてくる。


答えによっては彼を傷つけてしまうかもしれない。


実際、彼は恐れているように見える。


私がどんな言葉を発するのか。



クールな彼が見せた心の弱さ。


それすらも愛おしく思える。


秋月くんの全てが愛おしい。



少し離れたところに立つ彼の元へと歩みを進める。


ジッと私を見ている秋月くんに鼓動が早くなるし、体も熱くなる。


それでも近寄ることはやめない。


段々と近づく二人の距離。



少しでも手を伸ばせば触れられる距離。


彼に触れるために手を伸ばす。


所在なさげな右手を両手で握る。


大きな手が僅かに震えた。



「私は怖くないです。人である秋月くんも人でない秋月くんも…私は、好きですから」



彼の手をギュッと握りしめた。


その瞬間、全身から力が抜け私は気を失った。


直前、見えた彼の口角が上がっているようだった。