「妖狐」


「ヨウコ…?」



彼の言葉を反芻する。


その言葉は何を指すのか、すぐに分かった。


…妖狐。


彼の耳がそれを物語っている。



「それって、狐の嫁入りとかそういうのですよね?」


「当たらずも遠からずって所だな。俺は半妖だから」



狐の嫁入りは純血の妖狐がやることだ。


そう、彼は続けた。


また、新しい単語が出てきた。


半妖と純血。


それはそのままの意味で捉えていいということだろうか。



純血はいわゆる純日本人とか、そういう外人の血が入っていないことかな。


妖怪の中でいう外人の血というものが何なのかは分からないけど。



半妖は半と付くぐらいだから言うなればハーフ的な意味かな。


妖狐と何かの半分。


またしてもその何かまでは分からないけど。



「俺は妖狐と人間との混血だから」



まるで自分の血を恨むかのように彼は呟いた。


人にも妖狐にもなれきれない自分は半端者だと。


そんな風に聞こえた。


本当にそう思っていたのかもしれないし、私の思い違いかもしれない。


けれど、やっぱり。



「秋月くんは秋月くんですよ」



妖狐だとか半妖だとか聞いても私の考えは変わらない。


変わりようがない。


今、実際に見ている状況が事実なのだから。