その時、校門のところに人影が見えた。


月明かりの中、佇むその人。


金色の髪がとても目立つ、絵になってるその人。


遠巻きに部活とかで残っていた女子生徒たちが騒いでいる。


確かに秋月くんはかっこいいもん。


私も見とれてしまうほどかっこいいもん。


ふと、俯いていた彼が顔を上げた。


切れ長の茶色い瞳が私を捉える。



「秋月くん!」



思わず叫んでいた。


駆け出す足。緩む頬。揺れる髪の毛。


秋月くんが私を待っていた。


ちゃんと待っていてくれた。


信じてはいたけれど、待っていてくれたことが凄く嬉しい。



「マコト」


「秋月くん、ありがとうございます」



軽く頭を下げる。


少しでも彼氏彼女らしいことをしたほうがいいかもしれないけど、まずは礼儀。


ここまで来てくれたお礼を伝えたかった。



「真琴!じゃあね」



手を振る京子に私もまた明日の意味を込めて、手をキツネの形にする。


すると、京子も真似てキツネ返し。


京子の横に居る部長には目をやらないようにして。


秋月くんの方に向き直ると、彼は私の後ろをジッと見ていた。


京子と部長の居る方を睨むようにジッと。



「秋月くん?」



首を傾げ、彼の名前を呼ぶ。


すると、彼は私の顔を見て止まった。


彼の瞳の中に私が映る。



「…行くか」



それも一瞬のことで秋月くんは何事もなかったかのように歩き出した。


ちゃんと、私の家がある方向へと。


置いていかれたないよう、慌てて秋月くんの横へと急いだ。


校門を出る瞬間、ぞわりと悪寒が奔ったことは気にならないことだった。