それに答える暇もなく、秋月くんに手を引かれ道場を後にする。


部長に私から何も言うことが出来なかった。


部長は部長で最後とか、分かっていたとか言って一人で納得していたし。


きっと、勘違いして納得したんだよね、部長は。



「真琴、着替えてこい。待ってるから」


「あ、はい」



繋がれた手を離し、更衣室へと向かう。


更衣室に入る直前、秋月くんの方へと振り返ると少し離れた明かりの下で待っていてくれている。


私は急いで中へ入り帰る支度を始めた。



なんか、急に秋月くんが現れたから緊張も吹き飛んだ気がする。


それに部長の告白も衝撃的だったし。


待たせてはいけないと早く着替えて身支度を整える。


ここまで来てくれたってことは、それだけで既に待たせていたってことだし。


他校生なのに学校の敷地に入ってきたことはとりあえず置いておいて。


更衣室を出て鍵を閉めると秋月くんの元へと駆け寄る。



「すみません。お待たせしました」


「いや、帰るか」



そう言って歩き出した秋月くんの横へと並ぶ。


すると、横に並んだ瞬間、自然と手を繋がれた。


思わず引いてしまう手を秋月くんが強く握る。



「どうした」


「いや、えっと…手が…」


「手がどうした」


「な、なんでもないです」



何も変なことはしていないと、そんな空気を醸し出す秋月くんに逆に気にしている私が変だというような、そんな空気になる。