「帰るぞ」



火照る頬を秋月くんの手が撫でる。


サラリとした冷えた手の感触は直ぐに離れ、そのまま流れるように私の手を取った。


キスの余韻が残る中、コクリと小さく頷く。



優しく引かれた手をぎゅっと握った。


すると、それに答えるようにゆっくりと力強く握り返してくれる秋月くん。


スッポリと私の手を包む大きな手のひら。


自分のものとは違うゴツゴツと骨張った男の人の手。


安心感のあるその手が私の手を握っているその事実は夢ではない。



家へと帰るために歩き出した足は至極ゆっくりで。


秋月くんが意図して歩みを緩めていることは一目瞭然だ。


チラリと秋月くんのことを盗み見れば、前だけを見据えていて私が見ていることには気付かない。


ただ、私の家へと向かって歩いている。


公園を抜ければ10分そこらで家に着く距離。


しばらく歩いたけど、秋月くんは何も喋らない。