秋夜さんに秋月くんが私のことを想ってるって言われて。


信じないと言いつつも、間に受けて勝手に信じ込んで、浮かれてたんだ私は。


同じ気持ちだなんてそんなことあるはずないのに…っ!



「…え?」


「俺だって…俺だってな…!」



直ぐ近い距離で鼓膜が揺さぶられる。


一度感じたことのある温もり。ギュッと体全体を心地よい力加減で包まれている。


抱き締められてる。


そのことに気付くのに時間はいらなかった。



ふと顔を上げれば至近距離で秋月くんの瞳と目が合った。


今まで見たことのない瞳。


どこか熱の籠った眼差しで私を見ている。



「秋月く…んっ」



何をしているのだと。彼の名前を呼ぼうとした私の声は彼自身によって飲み込まれた。


思いもよらない行為によって。そう、キスによって。


目を閉じた秋月くんの顔が目の前にあって。


ぶつからないようにと傾けられた鼻の頭が私の頬に微かに触れている。



ああ、こうして見ると秋月くん、凄くまつ毛長いや…


それに肌のキメも細かい。なんなら、私の肌よりもスベスベじゃなかろうか。


柔らかな感触を直に感じる唇。


私のものと秋月くんのものとが触れ合う唇にどうにか意識がいかないようにするけど、それは無理な話で。


突然のことに動くことすら出来なかった。



時間にしてみればきっと一瞬のことだっただろう。


だけど、私にしてみれば長い時間のように感じたキス…


ゆっくりと離された唇が艶かしく見える。


今の今まで彼の唇が私にキスしてたんだよね。


ギュッと抱き締める力が強くなった。