さっきまで口籠っていた彼はどこへやら。


やけに威圧的な態度に私が怯んでしまう。


まるで自分の心の内を隠すかのような変化。私はその変化を逃さない。



「秋月くんは面倒くさがり。なんですよね?そんな人が守りたくて守るなんてしますか?私はしないと思います。だって、結局は面倒くさいですもん」



面倒くさがりなのに自分から面倒くさいことに首を突っ込むなんてこと普通はしないよね。


普通はしないことを秋月くんはやったんだ。


だったら、やると決めた大きな理由があるはず。


私はその理由が知りたいの。守ろうと思ってくれたその理由が。


私だったら、私だったら…



「…私だったら、好きだからとか気になるからとか。そういう理由がないと面倒ごとをしようとは思わないです。


物事には必ず理由がついて回ってると思います。


大人の人が仕事するのは家族を養うためだったり。学生が学校に行くのは将来の夢のためだったり。


そりゃ、そんな理由がない人も居るかもしれませんよ。でも、やっぱり何事にも理由があるんですよ。


私が空手をやっているのだって強くなって、大切な人を守るためですし。


大きさは様々ですけど、やっぱり理由があるんですよ。私が秋月くんから離れようと思ったのは…」



一瞬、このまま最後まで言ってしまって良いのかと考える。


だけど、ここまで言ってしまったんだ。


本当は秋月くんの気持ちを聞いてから言いたかった所だけど。


今更、止めることも出来ない。


私が秋月くんから離れようと思った理由。


本当の理由を彼に伝えよう。私の精一杯の気持ちを込めて。