「秋月とボクは同じ半妖の双子として生まれた。


少し成長した頃からボクと秋月とは明確な変化が現れた。


それは力の変化。


ボクは何の力が現れないのに対して、秋月はすぐに狐火や風を起こせるようになった。


そして極め付けは変化。


秋月は人間に化けることも、妖狐になることも出来た。


ボクはどれも出来なかったんだ。


弟よりも出来の悪い兄だと罵られ、挙げ句の果てには力のない奴はいらないとボクは一人里を追い出された。



何でも出来た弟のことが好きだったよ。


ずっと、隣に居て。ずっと、一緒に遊んで。


その中で力の変化を目の当たりにした。


純粋に凄いと思ったし、尊敬してた。


ボクには出来ないことが出来て。



だけど、一人になって気づいた。


こうなったのは秋月のせいなんじゃなのかって。そう思うようになった。


秋月がボクの力まで全部奪っていったんじゃないかって。


里を追放されたボクは人知れない山の中で死の恐怖に怯えながら生きていた。


まだ、親の手を借りて生きていたボクだ。


どうしたらいいのか分からなくて。


人間にも妖狐にもなれないボクは人里に降りることも、妖狐の里に行くことも出来ず一人で。


ずっと一人だった。