「バカの一つ覚えみたいにただ殴って。そんなんで、ボクがどうにかなるとでも思ってるの?」



滑稽だね。秋夜さんがあざ笑う。


全然疲れの見えない秋夜さん。


それ反比例するかのように、絶え間なく攻撃していたのと怪我からか息を切らしている秋月くん。


お兄ちゃんや司さんにも疲れが顕著に表れている。



それほどまでに秋夜さんが強い相手なのだろうか。


私からはそうは見えないんだけど。


やっぱり気になるのは秋夜さんの言葉だ。好きで嫌い。


その意味さえ分かれば私にだって。



再び秋月くんが動き出した。


また傷つくんじゃないか。


そうなる前に早く答えを見つけないと。


早く彼を助けないと…!



「好きで嫌い…」


「そう。ボクは秋月のことが好きで嫌いなんだ」



私の呟きに答える声。


気づきば秋夜さんがリョクさんを挟んで目の前まで来ていた。


いつの間にとか思う時間もなかった。


グワッと彼に向かってリョクさんが大きな口を開く。


びっしりと生えた牙が彼を襲う。


それを軽やかなステップで避けると秋夜さんは私に言った。