歩み出そうとしていた一歩は後ろに戻る。


風が強くなり、伝わってくる熱も高くなる。


チリチリと肌を焼くような痛みを感じ始めた頃。



「ぐあっ!」



唸り声と共に椎名先輩が崩れる。


片膝をつき首を押さえる椎名先輩の背後に秋月くんが現れた。


そして、そのまま秋月くんは椎名先輩の顔を持ち上げると無理やり視線を合わせる。


ふわりと彼らの周りに風が舞った。


瞬間、椎名先輩の体が崩折れた。地面に倒れたその体。



「マコト!」


「え?きゃあっ!」



秋月くんに名前を呼ばれ気づく。目の前にまで迫っていた竜巻。


思わず顔の前に腕をやり構える。


そんなのじゃ足りないことは分かってる。


だけど、ここまで来たら逃げることもどうにか対抗することも出来ない。


直後に来るであろう衝撃に耐えようとした。



が、いつまで経っても竜巻に飲まれた感覚はなく。


恐る恐る腕を下ろした。


目の前に広がるのは鮮やかなエメラルドグリーン。


リョクさんがそこに居た。