遠くで影が揺らめく。


それは、飛ばされた椎名先輩が動いた証。


先輩の姿が消えた。いや、違う。


凄いスピードでこっちに向かってきてるんだ!



「秋月くん!」


叫ぶ。


「…ッチ」



舌打ちした彼は私を突き飛ばすと先輩に向かっていく。


突き飛ばされた反動で数歩後ろへよろめいた。


秋月くんが椎名先輩の方へと立ち向かう。


横に払われた右手から青色の狐火が繰り出される。


いくつもある炎は勢いを増し、大きな炎の壁となる。


秋月くんの背中越しに伝わってくる熱。


炎の熱さを物語っている。



「お前が…!」



揺らめく炎の向こうに居る椎名先輩が叫ぶ。


先輩は臆することなく炎の壁へと向かってきている。


青色の炎ということはその炎は通常の炎よりも高い温度ということ。


つまりは、とてつもない熱さ。


生身の人間がそれに触れでもしたら、軽いやけどでは済まないだろう。



そんな青い炎へと向かう先輩。


思わず目を背けた瞬間、ドカンと大きな音が耳についた。微かに肩が跳ねる。


音だけでは何が起きたのかなんて分からない。


ただ、無事では済まないだろうことだけは分かる。


恐る恐る目を開くと、炎が渦巻くそこに拳をまじ合わせる二人の姿があった。



熱さなんて一切感じさせない金色が目立つ秋月くんの姿。


一方、所々服が焦げた椎名先輩の姿。


服は焦げているが驚くことに肌には一切炎によるやけどや怪我は見当たらない。