死んでいたはずのお兄ちゃんがバッと顔を上げた。


「真琴!お前、秋月と何があったんだよ!」


「は?何、急に」



司さんに一発で召されたはずのお兄ちゃんが復活した途端に声を荒げる。


その声が廊下に響き渡った。


大き過ぎる声に顔を顰める。


一々、うるさいのよ、お兄ちゃんは。



「あいつ、めっちゃ機嫌悪かったんだけど、絶対真琴だろ!」


「はあ!?」



秋月くんが機嫌悪かったことと、私。


どこに関係があるっていうのよ。


面倒臭いことがなくなったんだから、清々しているはずでしょう。


だから、機嫌が悪いことなんて私には一切関係ない。



「そんなの、知らないし」



秋月くんが機嫌悪かったからって何よ。


そんなのお兄ちゃんがどうにかすればいいし。


秋月くんだって人間だもの。


虫の居所が悪い時だってあるでしょうよ。


お兄ちゃんにとやかく言われる謂れはない。



「凌」


「う…分かったよ…」



司さんが嗜めると大人しくなるお兄ちゃん。


その姿が飼い主と飼い主に従順な犬に見えたのは気のせいか…