すっげぇイライラしていた俺は、自分でも驚くほど低い声を出していた。

「げっ、連れって男かよ!」

「ちっ、行くぞ」

俺の登場で逃げていく男たち。

「ありがとう、龍心」

ホッとした表情の心奈。

「別に。つか、怯えすぎ」

「だって一人でいる時に声掛けられたことないもん。
いつも夏澄とかが追い払ってくれるから…」

なるほど、さすが夏澄ちゃん。

つか、やっぱ出かけるとナンパされんだな、こいつ。

「夏澄ちゃんを見習いなさい」

「はーい」

口を尖らせながら返事をする姿に、少しドキッとする。

「刺繍できるまで時間かるし、飯でも食うか」

ドキッとしたのがバレないように、話題を次に持っていく。

「うん!」

そう言って、俺らは歩き出した。


俺は何となく、心奈の手を離さなかった。