そんなあたしの様子をじっと見つめていた愛理。

「今のイケメンの先輩、心奈の彼氏?」

いつものあまり感情が読めない表情で聞いてくる愛理。

多分初対面の人はビビってしまうだろう。

でも、あたしは慣れたし、クールな表情の愛理はかっこいい。

「違うよ?龍心はあたしのお兄ちゃん」

そう言えば、愛理に龍心のこと言ってなかった。

「そうなの?
いいなぁ〜、あんなイケメン」

愛理は龍心が出ていった出入口を見つめていた。

まっ…、まさか…、

「恋…しちゃった…?」

「あっ、それはないない。
あたし彼氏居るし」

よかった〜って…!?

「えっ!?愛理彼氏居たの!?」

「あれ?言ってなかったっけ?」

初めて聞いたわ!!

1カ月一緒に居るけど、まだまだ愛理のこと知らないなって思った。

「どんな人?同じ学校?」

「彼氏の話はまた今度。
それより試合でしょ?」

と、愛理は上手くはぐらかした。

「あっ、うん、そうだね」

あたしは椅子から立ち上がり、コートへ出た。

その途中、後ろの愛理が、



「折山…龍心…」


なんて呟いたこと、あたしは全く気づかなかった。