「え?」

あたしはその場で立ち止まった。

しばらく、龍心が言ったことを理解できなかった。

あたしが立ち止まったのに気付いた龍心も立ち止まったが、こちらを向いてはくれない。

「そう言うことだから。
お前もちゃんと侑希と上手くやれよ?」

「っ!?なんで侑希!?」

まさか…、龍心に見られていた…?

「んーとまあ、見ちゃったんだよね、あれ。わりぃ」

はははと、笑いながら頭を掻く龍心。

「……」

「侑希いいやつだし、兄ちゃん大賛成だわ」

何よ、それ。

自分の事兄ちゃんとか普段言わないくせに。

こんな時に限って兄ちゃんなんて言わないでよ?

現実が痛いほど伝わってくるじゃない。

「じゃあ、妹として言う。
おめでとう、お兄ちゃん」

あたしはそう言って、走り出した。

【妹】って言葉も、【お兄ちゃん】って言葉もあたしは嫌いなのに、まるで自分に言い聞かせるように言った。

当然のことだけど、龍心は追いかけてはこなかった。