君色のこころ〜1番近くて1番遠い〜


龍心side

「ちゃんと寝とけよ」

俺はそう言って保健室を出た。

しばらく廊下を歩いてから、壁にもたれかかって座り込んだ。

最後に心奈の頭を撫でたのは、さっきまでの温もりが名残惜しかったから。

心奈が倒れた時、古い記憶が蘇ってきた。

心奈を失ったら、俺はどうなるんだろうと考えるだけでも恐ろしい。

目覚めた時、どれほど安心したか。

思わず彼女を抱き締めた。

ちゃんと心奈は此処に居るって実感が欲しかったんだ。

抱きしめ返してくれた心奈が、俺はたまらなく愛おしかった。

これ以上抱き締めたら、俺は兄貴には戻れないと思って、彼女から離れた。

「……俺って」



俺って、どうしようもないくらい心奈が好きなんだな―――。


久しぶりに好きと認めた。

小さい頃から好きだった。

成長していくにつれて増していく心奈への想い。

でも、俺が【お兄ちゃん】、心奈が【妹】になったということは、自分の心奈への想いは家族をダメにしてしまうかもしれないと悟った。

もう何年もこの気持ちから逃げていた。

でも今日、もうそろそろちゃんと向き合おうと思った。