君色のこころ〜1番近くて1番遠い〜


そうだ…、龍心の前で倒れちゃいけないんだった…。

彼の辛い記憶を呼び起こしてしまうから…。

「ごめんね、龍心…」

あたしがそう言うと、龍心はもっと強く抱き締めた。

龍心の1番古い記憶は、本当のお母さんが目の前で倒れた時の記憶だ。

2人で散歩に出かけた時、突然お母さんが倒れた。

龍心は必死にお母さんを呼ぶけど、運ばれた病院で亡くなった。

元々心臓の弱い人で、心臓発作を起こしたらしい。

あの時の体験から、龍心は人が倒れるのを見るのが怖くなった。

前にも心結が目の前で熱中症で倒れた時、龍心が1番動揺していた。

あたしが倒れた時も、きっとそうだったんだろう。

「あたしは居なくなったりしないよ…?」

あたしは、ちゃんと此処に居ることを証明するように、龍心を強く抱きしめ返した。