---裕side---


「・・・ん? 裕君?」


「え?」


声をかけられた方を見ると


美咲が不思議そうな顔で


俺を見ていた


「さっきから ぼーっとして


どうかしたの?」


「なんでもない」


そう言って 誤魔化した


本当は あるんだけど


藍実ちゃんに キスされた


「久々のデートなんだから


次 どこ行く?」


そう言いながら 美咲は


俺の腕に絡んで来た


「・・・悪い ちょっと


用事思い出した」


美咲に 謝って


その場を走り去った


どこに向かっているのか


わからなかった・・・


でも 藍実ちゃんに


会いたい・・・


そんな気持ちが 生まれた


ポケットから スマホを出す


【岸本藍実】


もし 出たら何を話せばいい?


知らない内に 通話ボタンを


押していた


何度も呼び出し音が鳴る・・・


出るはず・・・ない


そう 思っていた


『・・・もしもし?』


ドキン


「あ・・・藍実ちゃん?」


『うん・・・ 何?』


彼女の声は 少し


冷たく聞こえた