「お嬢様ー!」


「カナお嬢様ー!」


「何処にいらっしゃいますかー?」


パタパタパタ…


メイドさんたちのパタパタと走っていく足音が聞こえる。



「行ったかしら…」



スッ…と物陰から顔を出し辺りを見回した。



(よし!誰もいない今がチャンスね)



そう心の中で呟いて物陰から身を乗り出し、出来るだけ音を立てずに物陰から漸く出てくる。



(ふぅ……結構あそこ狭かったのよね……ハッこんなのんびりしてられないわ!見つかる前に行かなきゃ)



手袋をしている手首を額に当て汗をスッと拭い、急いでその場から離れるように走った。



パタパタパタ……



走ってたどり着いた場所は、裏門の扉だった。
屋敷の裏門は一部の人しか知らないため、滅多に人は来ない。


ハァ…ハァ…ハァ…


少し息が上がっていたが、呼吸を整える時間はないので、直ぐ様、扉に手を掛けようとしたところで、少し遠いところからコツッコツッという足音が近付いてることが分かった。



(はっ……ヤバイわ…もう誰かに感付かれている…。)



その足音は徐々に近付いてきていた。



足音が近付いてきている焦りもあり、急いで扉を開けると
キイィィィ…という音がなってしまった。



その音に気付いたのか、さっきの足音とは違い、音が早くなっていることから誰かが確実に走って近付いてきていることが分かる。



(アッ…早く行かなきゃ……、)



そう思って前に進もうとしたが、扉から見た外はどしゃ降りの大雨だった。