『……今日はいる。』


僕の一日は、僕のバイト先の向かい側にある1つのお店に1人の女の子がいるかどうかから始まる。

その子の名前は…知らない。

でも、お店のオープンの時間は一緒。

にこやかに接客する、姿。


一所懸命、物を運び、テーブルを拭く姿。

どれも僕の心に真っ直ぐに響く。

ばこんっ!

『…いてっ!!』

と言いながらも、まだガラス越しの彼女を見つめる。


『ボサッとすんな!!ってまた見てんの?飽きないねー』


そう言うのは僕の一つ上の先輩だ。


『だってねぇ?!』
僕がガラス越しの彼女を見ているのを知っているのは、この先輩と店長だけだ。

『私に同意を求めないで下さい。ほれ仕事!仕事!』


そんな日々が、1ヶ月たったある日



カランカラン

入り口のドアが開く。

『いらっしゃい…ま…せ』

なんとあの女の子が、1人でこの店にきた。

『すいません、待ち合わせで1人増えるんですけど…いいですか?』

初めて声を聞く。

可愛らしい声だ。
私服は何度かみたことがある。
でも今日は、少し大人っぽかった。

間近で見れた彼女に見惚れる。

『あ、あの…?』
彼女は首を傾げる。


可愛い?いや天使だ!


『あ、すいません…こちらにどうぞ。』


気を取り直し、席へと案内する。


『あ、アイスティー下さい。』

『はい、かしこまりました。』


胸が、心臓がドキドキいう。

こんなにも、恋焦がれた彼女を目の当たりにすると緊張するもんなんだと、
自分が少し、情けなくなった。

そしてアイスティーを彼女の元へ運ぶ。


『失礼します。アイスティーお持ちしました。』