ガチャガチャ…


「あ、お母さん達じゃない?」



玄関から聞こえた音に
バタバタと走ってく雫。

その後ろ姿を見届けて
俺は視線を窓の外へ向けた。


「…………」


雫は、

“家族”が好きだ。


父さんが居て
母さんが居て

俺が居て。


小さい頃から
家族で出掛けるのが好きだった。


それは今も変わらない。



だけど俺のこの気持ちは、

そんな雫の大好きな
この家族を壊してしまう。


だから誰にも



───気づかれる訳には、いかない。