私の部屋は8階。
エレベーターはそこまで一気にのぼりきった。
こんな時間だし、それに夜働いてる人なんてこのマンションではあたしくらいか…。
このマンションははっきり言ってあたしのお金で家賃は支払っていない。
あたしのお金は全て借金返済へと流れている。
そう、あたしを物としてしか見てこなかった両親の借金。
もちろん全てが手元に残らないわけじゃないけど、ここの家賃を払っていたら食費とか電気代とか水道代とか…全然払えなくなる。
「ほんと、ママがいなかったらこんな生活できなかった」
ママは相当あたしを気に入ってくれてて、シュウちゃんに頼んでこのマンションをあたし用に借りてくれてる。
他にも色々あたしには良くしてくれているママ。
だからこそあたしもお店に貢献しようと毎日自分磨きを頑張っている。
長い廊下を進んで着いたあたしの部屋。
持っていた鍵でドアを開けようとした。
でも…。
「…あれ?開いてる?」
鍵はもうすでに開いていた。
実は普通の鍵と二重でカードロックもできるんだけど、今日に限ってあたしはカードロックをするのを面倒だからという理由でしなかった。
「う、嘘ぉ…。まさか…ね?」
確かに世の中物騒だけど、きっと普通の鍵をかけるのもあたしはしなかったんだ。そうだ。きっとそう。
そう思ってあたしはゆっくりと自分の部屋のドアを開けた。

