目を閉じて、カリンの姿を思い浮かべる。


胸の奥が少し熱くなるのが分かった。


「…カリン」



こんな想いは初めてだ。

今すぐにでも店に戻り彼女の細い体を抱きしめたい。


そう思った瞬間に、俺の体は動き出していた。



急いで店内に戻り、さっき俺と話していた時の顔とは全く違う顔をしたカリンの腕を引っ張った。


その場にいた全員が俺の方を見た。


「何してるんだ愁」


鬼のような顔で俺を睨む直人。

きっと直人にとってもまたカリンは特別なのかもしれない。



「すみません直人さん。俺に少し時間をください」


「俺の客だぞ」


「分かってます」



カリンは少し驚いたような顔で俺の顔を見つめた後、直人に向けてこう言った。


「少しだけあたしもこの人と話したい。いいわよね?」


「…すぐに戻ってくるか?」


「もちろん」


「そうやって言うなら少しだけな」



カリンの言葉には驚くほど素直な直人。


俺はカリンの腕を引っ張り店の奥のVIPルームへと通した。